11-2 物権変動
⭐️教科書249頁以下「(1)物権変動とは」も参照してください。
- 物権変動とは、物権の発生・変更・消滅のことを指します。
- 物権の設定(例:地上権や抵当権の設定)や移転(例:所有者AがBに対して所有権を譲渡する場合)は、当事者の意思表示だけで効力を生じます(民法176条)。
(Cese4:所有権移転の例) Aは自己所有の甲土地を目的物とし代金を1000万円とする売買契約をBとの間で締結した。
- 売買契約は、売主が「ある財産権」を相手方(=買主)に移転し、相手方がこれに対して代金を支払う契約です。(Case4)の場合は、甲土地の所有権が民法555条の「ある財産権」です。したがって物の売買契約の場合は、物の所有権移転について当事者が合意しています。
- (Case4)の場合には、AーB間の売買契約が締結された時点で民法176条に基づき甲土地の所有権が移転する。
(Case5:所有権移転時期について当事者に合意がある場合) Aは自己所有の甲土地を目的物とし代金を1000万円とする売買契約をBとの間で締結した。この契約においてAとBは甲土地の所有権移転時期をBが代金を支払った時点とすることに合意した。
- この場合、民法176条の「当事者の意思表示」には「所有権の移転時期に関する合意」も含まれていると考えることができます。
- したがって、(Case5)では当事者の合意した時期に所有権がAからBへと移転します。
11-3 不動産の物権変動の対抗
⭐️教科書251頁以下「(2)不動産所有権の取得を第三者に主張するには公示が必要です」も参照してください。
- 民法176条が規定しているとおり、物権の設定または移転は当事者の意思表示(合意)があれば、その効力を生じます。
- 当事者間で効力を生じるということと、物権の設定や移転があったことを第三者に主張することができるのとは別の問題です。
- 民法177条は、不動産の物権の得喪及び変更は、登記をしなければ第三者に対抗できない旨を規定しています(不動産の場合、教科書251頁の「外界から認識できるシンボル」は登記です)。
11-3-1 民法177条が適用されない「第三者」①
⭐️教科書257頁「(a)正当な利益をもつ第三者」とは」も参照してください。
- 国語的意味では、「第三者」とは「当事者以外のすべての者」のことを指します。
- 民法177条の第三者を「当事者以外のすべての者」と解すると同条の適用範囲が広くなりすぎてしまい不当な結果を生じてしまいます。
- そこで判例は、民法177条の「第三者」を「相手方に登記が存在しないこと(欠缺)を主張することについて正当な利益を有する第三者」と解しています。