12 責任財産とその保全
12-1 責任財産とは
- 責任財産とは、債権の強制的実現の対象となる財産(不動産・動産・債権など)のことを指します。
- 債務者が有している財産に、担保権(例:抵当権)が設定されている場合、その担保権の目的となっている財産は責任財産から除外されます。
- ちなみに、担保権がついていない債権のことを「一般債権」といい、その債権者のことを「一般債権者」といいます。
- 一般債権者は債務者の責任財産から債権を回収することになります。このことから、責任財産は一般債権者の共同担保であると表されることがあります。
- 責任財産が一般債権の総額よりも少ない場合、各債権者は総債権に占める各債権の割合に応じて按分して責任財産から弁済を受けます(債権者平等の原則)
12-2 責任財産保全の必要性
(Case6) AはBに対して100万円の貸金債権を有していますが、Bは債務超過状態(負債の額が総資産の額を上回る状態のことです)にあります。このような状態であるにもかかわらず、BがCに対して有している50万円の債権を行使してこれを回収しようとしません。
(Case7) AはBに対して100万円の貸金債権を有していますが、Bは債務超過状態(負債の額が総資産の額を上回る状態のことです)にあります。Bは以前Dから甲土地を購入し代金も支払っていますがDからAへの所有権移転登記手続は完了していません。
(Case8) AはBに対して100万円の貸金債権を有していますが、Bは債務超過状態(負債の額が総資産の額を上回る状態のことです)にあります。このような状態であるにもかかわらず、Bは唯一の目ぼしい財産である乙土地をEに贈与しBからEへの所有権移転登記手続を完了しました。
- 債務者が債務超過状態にある場合、債権者がどれだけ債権を回収できるかは債務者の責任財産がどれだけあるかに左右されます。
- そうすると債権者にとっては債務者の責任財産を確保して適正な状態に保つ必要があります。
- 他方で、責任財産は債務者自身の財産ですから、債務者がそれをどのように利用するか(あるいはしないか)は債務者の判断に委ねられるべきです(これが原則です)。
- とはいえ債務者が無資力状態に陥っている場合にまで債務者が財産を自由の処分できるとすると、債権者の利益(責任財産から弁済を受ける利益)が不当に害されることになります。
- そこで民法は、一定の場合に債権者が債務者が有している権利を債務者に代わって行使する権利(債権者代位権:民法423条以下)と、債務者がすでに行なった法律行為を取り消すことができる権利(詐害行為取消権:民法424条以下)を規定しています。
- (Case6)や(Case7)の場合に用いられるのが債権者代位権です。たとえば(Case6)の場合、民法423条1項本文に基づきがCに対して有している50万円の債権をAはBに代わって行使することができます。
- (Case8)の場合に用いられるのが詐害行為取消権です。BーE間の贈与契約を民法424条1項に基づきAは取り消すことができます。
12-3 債権者代位権
⭐️教科書201頁以下「債権者は債務者にかわって債務者の権利を行使できますー債権者代位権」も参照してください。