12-4 詐害行為取消権
⭐️教科書203頁以下「債権者は債務者のした行為を取り消すことができますー詐害行為取消権」も参照してください。
12-4-1 イントロダクション
教科書203頁・CASE6-2を例に確認しておきましょう。
- CASE6-2 の場合のCのように、取消の対象となる法律行為によって利益を受けている人のことを「受益者」といいます。
- CASE6-2のCが更にDに対して甲土地を売った場合のDにあたる人のことを「転得者」といいます。
12-4-2 どのような場合に取消が認められるか
⭐️教科書204頁以下「債権者を害する行為とは」205頁以下「詐害行為がされただけでは取り消せません」を参照してください。
- 詐害行為とは、債務者の責任財産を減少させる行為です。例えば、教科書203頁のCASE6-2で Bは債務超過状態にあるにもかかわらず、甲土地を無償でCに譲り渡しています。このような場合が詐害行為の典型例です。
- 債務者が詐害行為をしたとしても、直ちに債権者が詐害行為取消権を行使できるわけではありません。取消対象となっている行為(例:CASE6-2のBーC間の贈与契約)の時点で受益者が債権者を害することを知っていたときに限り債権者は、詐害行為取消権を行使することができます(民法424条1項ただし書参照)。
- 詐害行為取消権は、必ず訴訟を提起してこれを行使しなければなりません(民法424条1項本文が「…裁判所に請求することができる」と書かれていることに注意してください)。
- 受益者に対して債権者が詐害行為取消権を行使できる場合(すなわち、詐害行為が行われており受益者が取消対象となっている法律行為の時点で債権者を害することを知っていた場合)であっても、転得者が転得の当時債権者を害することを知らなかった場合、債権者は転得者に対して詐害行為取消権を行使することができません(民法424条の5参照)。
12-4-3 債権者が具体的にどのような請求ができるか
- 債権者は、詐害行為取消権を行使して債務者が受益者との間で行った法律行為を取り消すことができます。
- この取消しとともに、受益者に対して、取消対象となった法律行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができます。受益者が財産を返還することが困難な場合には、その財産の価額の償還を請求することができます(民法426条の6第1項)。
- 転得者に対して詐害行為取消権を行使できる場合(民法424条の5参照)にも、財産の返還あるいは価額の償還を請求することができます(民法426条の6第2項)。
- 債務者がした行為(=詐害行為取消権の対象となっている法律行為)の目的が可分なものであるときは、債権者は、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取り消しを請求することができます(民法424条の8第1項)。債権者が、価額の償還を請求する場合も同様です(民法424条の8第2項)。
- 債権者が受益者あるいは転得者に対して財産の返還を請求する場合で、受益者から返還されるのが金銭あるいは動産である場合または転得者から動産が返還される場合には、債権者は自分に対して返還するよう請求することができます(民法424条の9第1項)。債権者が受益者又は転得者から価額の償還を受ける場合も同様です。
13 法定債権の概略
- 法定債権とは、法の規定に基づいて発生する債権のことである。