権利能力とは、人が権利を有し、または義務を負うことのできる資格のことです。
権利能力は、「出生」によって始まります(民法3条1項)。
権利能力の終期について民法は規定していませんが、「死亡」が権利能力の終期です。
民法3条1項は、「人」を特に限定していません。つまり、全ての人が出生によって権利能力を有すると規定しています。 (参考:道垣内弘人『リーガルベイシス民法入門〔第5版〕』(日本経済新聞社・2024年)51〜52頁) 歴史的に見れば、人間であれば誰にでも権利能力があったわけではない。奴隷が家畜と同じように権利能力を否定されていた時代もけっこう長い。また、ローマ時代、家長(父と考えてよい)だけが権利能力をもち、家族構成員にはほとんど権利能力が認められていなかったこともある。身分制社会が崩壊し、すべての人が人として平等な権利能力を認められるようになったのは、近代になってからである。そして、その近代法の成果を述べるのが、3条であり、「私権の享有は、出生に始まる。」というのは、人間は誰でも生まれたら権利能力をもつ、権利をもち、義務を負う資格を与えられる、ということなのである。
⭐️合わせて、教科書・49頁「人は生まれたときから主人公です」を参照してください。
(Case1:権利能力を有しない場合の具体例)
ドラえもんが、「どら焼き甲」を手に持っている。ドラえもんは、「どら焼き甲」の所有権を有しているといえるか。
:ドラえもんは、「猫型ロボット」であって、「自然人」ではない。したがってドラえもんには権利能力がないから、ドラえもんは「どら焼き甲」の所有権を有しているとはいえない。
(Case2:意思能力を有しない場合の具体例)
AはBに対して「A所有のギター甲を1万円でBに売る」との意思表示をし、Bがこれに対して「その値段でギター甲を買う」と応答した(この2つの意思表示によって成立した売買契約のことを「本件売買契約」という)。しかし、上記意思表示をした際、Aは意思無能力状態であった。
⭐️本件売買契約を締結した際、Aは意思無能力状態であったことから、民法3条の2に基づき本件売買契約は無効です。本件売買契約に基づく目的物引渡債務の履行をBがAに対して求めたとしても、この請求は認められません。